知らないと中学受験に失敗するかも。 家族で事前に押さえておくべき3つの確認事項

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小学3年生になるとざわつきだす同級生ママ。
〝〇〇くん!受験するらしいわよ!〟
〝こないだN能研の入塾テストに◇◇子ちゃんきてたって!〟
〝・・・うちの子・・・どうしよう??〟

2023年の首都圏の私国立中学受験者数は52,000人を超え、過去最高になったと言われています。受験率は17.8%で5~6人に1人が受験をしている計算になります。

私立が多い首都圏や関西圏にお住まいの方だけでなく、最近は地方都市部でも国公立の中高一貫校が人気のため、上記のような話は全国で聞かれます。

では、果たして中学受験をするかしないかの見極めポイントは?
そして、すると決めたら押さえておきたい確認事項は?
自身も中学受験をし、首都圏や中部圏で中学受験指導をしてきた元塾長が赤裸々に答えます。

中学受験のメリット

ほとんどの親子が「想像以上に大変だった・・・」と振り返ることになる中学受験。
労力もお金もメンタルも、やると決めたら相当な覚悟が必要です。
ではそこまでして、得られるものは何でしょうか?
メリットを3つに分けてお話しします。

  • ①6ヵ年の学習環境確保
  • ②勉強時間の総量
  • ③本気になって勝負する経験

①6ヵ年の学習環境確保

中学受験の最大の目的。それは何といっても志望校の合格でしょう。環境の整った、かつ子どもの個性を伸ばしてくれる環境で学ばせてあげられる。これが中学受験の最大のメリットです。

※受験指導をしているとたまに「合格自体はどうでもいい。経験として中学受験させたい」というご家庭もいらっしゃいますが、やはり6年生の夏を過ぎてくると「ここまでやったんだから合格させてあげたい」と(特にお母さまが)変わることが多いです(笑)。

一般的に私立中高は、公立中高と比べて、質の高い教育が用意されています。それは平日の独自シラバス(大学受験を見据えた教科毎のカリキュラム)に限らず、土曜日や夏冬の長期休み時の特別補講プログラム、短期留学制度や修学旅行などあらゆる面で公立をしのぐでしょう。

また現在人気なのは中高一貫校。高校受験がなく、高校から合流する生徒がいない(又は少ないor別クラスになる)ことで、ほとんどの学校では前倒しでカリキュラムが組まれています。
つまり中3で高1内容に入れる。これが大きいのです。進学校では高3までのカリキュラムを高2までに終え、高3の丸々1年間を大学受験対策に充てられるのです。

こうした大学受験対策面で有利な環境であるのが私立中です。(国立中の一部も前倒しカリキュラムを組んでいます。)

一方で、附属校も人気です。早慶を筆頭とした有名私大の附属校は、条件さえ満たせば過酷な大学受験を比較的穏やかに乗り越えることが可能です。(※慶應系列はほぼ慶應大に進学しますが、早稲田高校や摂陵や佐賀など早稲田系列の一部は外部大学進学を目指す学校になっていますので注意を)

このように6~10年間の質の高い学習環境が確保できる。
これが中学受験一つ目のメリットです。

※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2018年

②勉強時間の総量

二つ目のメリット。これは意外と知られていないかもしれません。
中学受験をしない場合、小中学校段階の1日の学校外勉強時間は約1時間です。
当然、放課後の塾を含みますので、保護者さまから見ると「えっ?それだけ?」と驚かれるでしょう。

これは世界的に見てもかなり少なく、世界平均の1.8時間の6割弱に留まっています。

もちろん日本の子どもが悪いわけではなく、「やる気にさせられない」教育制度や文化が悪いのですが、それにしても将来が心配になります。
※子どものやる気 についてはコチラ
中学受験はそういう意味では「勉強時間の総量」確保になります。

小学2~3年生の準備期間は1.5h/日。
塾に通い始める4年生以降は2h/日以上が普通になり、6年生ともなれば3~4hにも及びます。

「そんなにガリ勉みたいにさせなくても・・・ちょっと可哀そう」

なんて方もいらっしゃるかと思いますが、将来的に見ても実は効率的です。
と、いうのは日本の教科のほとんどはスパイラル式になっているからです。

たとえば社会。
小学校で日本の歴史を軽く学び、中学では日本の歴史と世界の歴史を。
そして高校ではそれぞれをさらに深く学びます。

このように、スパイラル(螺旋)のように何度も同じ内容を学びながら習熟度を高めようとしています。

中学受験では、入試レベルに対応するため、一気に中学レベル(時には高校レベル)の内容まで学びます。そのために理解や暗記、演習の時間が必要なのです。

算数であれば、小学校の教科書では出てこない「方程式(実質の)」や「場合の数・確率」など、中学レベルの計算能力は必須です。

こうした勉強時間を中学入学前にしっかり確保し、中学・高校の勉強を平易(に感じる)ようにできる。これが中学受験のメリットの二つ目と言えるでしょう。

※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」2018年

③本気になって勝負する経験

最後は精神面の成長。
スポーツや音楽や趣味など、夢中になって取り組める好きなことや、なりたい職業など目標が見つかってそこに走り始めることができた子は、親のサポートがなくても自立して努力を積み重ねられるようになります。

が、多くの子どもはなかなか上記のようにいかないものです。
そこで「中学受験」という短期目標を設定し、家族で共有することで、本気になって挑戦し、勝負できるのは貴重な経験となります。

スポーツや音楽などと違い、明確なスコアが出るのも中学受験の特徴です。
・偏差値が2上がって65になった。
・模擬試験で全国トップ3000位に入った
これらはおそらく、子どもが初めて経験することになる数値での真剣勝負です。

上記のように嬉しい数値ばかりならいいのですが、
・3回連続で偏差値が下がって40台に・・・
・入試まで2ヶ月を切ったのに、志望校判定が30%に急落
なんて、想像しただけで胸が締め付けられるような現実をわずか11~12歳の子どもに突きつけねばならない可能性もあるのです。

受験勉強の3~4年の期間に、何度も涙するでしょう。
何度も家族で大ゲンカするでしょう。

そして受験期間。
首都圏ならば本命の多くは2/1の午前から始まり、平均7校受験します。
倍率から考えれば、取れる合格数は2~4個が普通で、全滅の子も少なからずいます。
こうした可能性まで全て見据え、どんな結果になるにしても人間的成長に変えられる(私は親の責務だと思っています)、と信じ、立ち向かうしかありません。

全力で勝負した経験は必ず、将来に役立つはずです。

落ち込む小学生の息子を肩に手をのせ励ます母親

中学受験のデメリット

メリットだけ読むと、
「むむっ!中学受験しなきゃ!」
と火がついてしまいそうですが、冷静にデメリットも考えてみましょう。

  • ①子どものメンタル
  • ②他の成長機会損失
  • ③家族の負担

①子どものメンタル

中学受験はいわば高校受験や大学受験の前倒し。
精神的に未熟な年頃の子たちに大きな負荷がかかるのは確かです。
やる気を引き出してくれる先生やライバルたちに囲まれ、挑戦的で自主的で前向きな受験が出来る子もいれば、絶対合格という結果だけを突きつけられ、暗記や演習を半ば強制的にさせられる子もいます。

私が指導していた子は前者に導くよう努めていましたが、他の塾もすべて合わせれば、3:7くらいで後者の子が多い感覚です。

「合格さえすればあとは楽になるから・・・今は我慢よ!」
は絶対に禁句です。燃え尽き症候群になるパターンです。
実際に私立中学に入学すれば分かりますが、すぐに新しい競争が始まります。
しかも、公立中とは比べものにならない高いレベルの競争です。

「わ、わたしは・・・大丈夫!そんなこと言わない!」
というママでも、偏差値のアップダウン、志望校判定模試の結果などを目の当たりにすると冷静な判断ができなくなるというもの。

中学受験を機に子どもがメンタルを病んでしまうことは珍しくありません。

②他の成長機会損失

中学受験をすると決めれば、他の習い事やスポーツは徐々に減らすことが多いです。
中には、スポーツや音楽と両立したまま、成績を上げ、合格を手にしていくバイタリティの高い子もいますが、多くの子は受験に集中する必要が出てくるからです。

長年続けてきたピアノを中断したり、芽が出てきてレギュラーになれたサッカーのクラブチームを離れたり・・・。

それだけではありません。

仲良くしてくれていた近所のお友達との友達付き合いや毎年行っていた家族旅行やキャンプなど、子どもが成長するイベントの多くをキャンセルし、塾の夏期講習や合宿に集中することになります。

10~12歳は多感な時期。
何に興味を示し、何に集中して取り組むか、本来じっくりと見守ってあげたい時期でしょう。
それらをロスするというのはデメリットに感じるご家族が多いです。

③家族の負担

そして家族の負担もかなりのものです。
まずは教育費。
国立はまだしも私立に通うとなれば中高6年分の学費は公立と比べて500万円以上は高くなります。中には6年間で2,000万円以上の学校も。
ここに中学受験の塾代がかかります。こちらは200~400万円が相場となりますが、6年生になって家庭教師や個別指導など掛け持ちするようになあれば500万円以上かかることもあります。

これらが投資対効果として見合うものなのか、十分に検討する必要があるでしょう(公立では得られない経験や大学進学先という意味で)。

お金だけではありません。

毎日の塾への送迎、模試や講習の際のお弁当や夜食づくり。
そしてここは塾のスタンスによって異なりますが、一緒に勉強する時間と工夫。

よく「中学受験は親の受験」と言われたりしますが、私はそうは思いません。
受験はやはり「子ども」が主体でなくてはなりません。

ただ、親や兄弟を巻き込んで家族ぐるみで戦う必要があるのも事実です。 中学受験には家族みんなの覚悟が必要なのです。

円陣で重ねた手の中心に挙手する子どもの手 背景は青空

わが子の向き不向きチェック

「ん~、まだ迷う~・・・」というパパママのために、そもそもお子さまが中学受験に向くタイプなのかどうか、チェック項目を用意しました。

5つの内、3つ以上当てはまれば前向きに検討してもよいと思います。

  • ①本人に中学受験をしたい明確な理由がある
  • ②親の目から見ても大人びている
  • ③算数が得意である
  • ④集中力&忍耐力がある
  • ⑤前向きで成長思考ができる

①本人に中学受験をしたい明確な理由がある

これが一番大事です。
・将来〇〇大学に入って〇〇になるために
・オープンスクールに行って憧れた
・どうしてもあの制服が来たい
など、譲れない理由であればあるほど粘りや頑張りがききます。

②親の目から見ても大人びている

言動や行動が大人びている、つまり早熟型の方が中学受験には向いています。
国語の読解や社会の資料の読み取りなど、論理的思考に繋がるからです。
逆に少しのんびりおっとりしていて晩成型かな~という子は高校受験の方が結果が出やすいかもしれません。

③算数が得意である

多くの学校で合否を握るのが算数です。
これは大学入試が文系でも数学が必要な学部学科が増えてきてること。
そして私国立中高側も、出来れば理系の難関有名大学への合格実績を作りたいこと、が背景にあります。
「算数が得意な子」を合格させたい学校は、入試で「算数で差がつく」ようにしているわけです。
計算の正確性やスピード、図形のセンスなど算数が得意な子はそれだけで武器になります。

④集中力&忍耐力がある

いざという時に我武者羅に集中して頑張れる子。
そして過酷な長時間の勉強にも忍耐強く耐えられる子。
特に5~6年生になると、これらの要素で成績の上がり方に差が出てきます。
短距離走も長距離走もどちらも走れるタイプが向いています。

⑤前向きで成長思考ができる

これは性格的な部分です。中学受験はあらゆる場面で数値(スコア)と向き合います。
・月例テストで順位が下がったので席も後ろの方になった
・頑張ったはずの漢字テストで70点だった
こうした結果が出た際に「あ~、私はもうダメだ・・・」ではなく「なるほど!面白くなってきたぞ!ダメだった理由を分析して次に生かそう!また成長できる!」という子の方が向いています。
これは中学受験に限ったことではありません。

説明書を見ながら夢中でブロックを組み立てる小学生の男の子

すると決めたら家族会議で3つの確認

さぁいよいよ中学受験をする!と決まれば、家族会議です。
家族全員であらためて以下の3つの確認を行いましょう。
本人や家族が共有したしるしとして紙に書いて貼っておくのもおススメです。

  • ①途中で諦めない!弱音を吐かない!
  • ②合格も大事!でも人間的成長のほうがもっと大事!
  • ③家族みんなで一丸となって戦おう!目指すは〇〇中!

①途中で諦めない!弱音を吐かない!

中学受験を「とりあえずやってみよう」は危険です。
逃避経験による挫折感を引きずることになりかねません。
やるなら最後までしっかりと戦い抜く。まずはこの覚悟から。

②合格も大事!でも人間的成長のほうがもっと大事!

個人的に受験を決めたご家族に一番伝えたいのがこれです。
第一希望の中学校に合格できたからと言って、将来の幸せが約束されるわけではありません。人生はまだまだ長く、たったひとつの分岐点を超えるだけ。合格・不合格という結果に振り回されず、中学受験という経験を人間的成長に繋げられるようにしましょう。

③家族みんなで一丸となって戦おう!目指すは〇〇中!

最後は目標校です。3~4年生でまだ決まらないうちは空白にしておいて、「5年生の夏休みにオープンスクールで決める!」などと添えておくのもいいでしょう。いずれにしても本人の実力+偏差値7~10くらいの少し高めが目安です。
お子さまにネタばらしする必要はありませんが、これはエベレスト理論。
・エベレストに登る準備をすれば富士山には楽に登れる
でも富士山に登る準備ではエベレストには届かない
というものですね。
長期目標を設定するときは少し高めに。逆に短期目標は低めを積み重ねていくと成績UPに繋がりやすいです。
そして、この目標を達成するのは本人の努力だけでなく、家族の全力のサポートが不可欠だということも握っておきましょう。家族の覚悟、ですね。
受験後の3月や春休みの旅行計画なんてのも添えておくと、家族の励みになりますよ。

青空を背景に手をつなぐ両親と2人の子どもの後ろ姿

それでも迷ったら・・・

以上、自身の中学受験の経験とたくさんの中学受験生を見てきた経験からお話してきました。それでも迷う方もいらっしゃるでしょう。
・経済的にギリギリ・・・
・パパとママで意見が割れている・・・
・本人がはっきりしない・・・
など。
まずは、オープンスクールや文化祭、学校見学に行ってみたり、近くの塾で先生に相談してみたりするのがいいでしょう。

それでも上記のような状態から変わらない場合は・・・中学受験はしない方がよいと思います。

お住いの場所によっては、地元の中学校が荒れていたり、仲のいいお友達がみんな受験するなど、中学受験するのが当たり前のような空気感になることもあります。
しかし、全国的に見れば中学受験する生徒の方が圧倒的にマイノリティです。
高校受験からでも、難関大に進学する子はたくさんいますし、その後の就職などで困ることはほぼありません。
つまり、プロセス(途中経過)が違う方法になるだけで、同じゴールに辿り着くことは十分可能なのです。

覚悟が決まらない受験をするよりも、情報をしっかり集めて、お子さまにあった環境を整えていくほうが私は正解だと思っています。

夢を持つことが勉強するモチベーションにつながる

中学受験をするにしてもしないにしても、小学生段階で大切なのは
・なぜ学ぶのか、自分なりの答えを見つける
ことです。

小学生の間は〝新しいことを知る〟知的好奇心だけで乗り切れるかもしれませんが、中高生ともなればそうはいきません。

そこでおススメしたいのが早期キャリア教育です。
欧米では、【学習意欲の引き出し効果】が注目され、キャリア教育熱が高まっています。

仕事というフィルターを通して世の中を見ることで、自己探求し、自分のなりたい姿が明確になっていきます。

将来なりたい姿の解像度が上がれば上がるほど、逆算で《なぜ自分は学ぶのか》そして《今何をすべきか》に気付き、主体性が引き出されていくのです。

もちろん中学受験するとなれば長期目標の重要性は言わずもがな!

オンラインスクールDreamDrivenは、ただいま無料体験イベントを実施中。
ぜひこの機会に早期キャリア教育をお試しください。

この記事を書いた人

代表取締役社長

鹿嶌將博(かしままさひろ)

1975年、愛知県名古屋市生まれ
株式会社ミライメイク 代表取締役社長
NPO次世代キャリア教育プロジェクト理事


【ドリドリプロデュ―サー鹿嶌とは】
2017年、イエナプランをはじめとしたオルタナティブ教育を学ぶためオランダへ。
世界一幸せな国オランダの子どもたちとその教育に触れ、日本の子どもたちのために挑戦を始める。
同年にモンテッソーリ教育をベースにした企業主導型保育園を設立。運営していた進学塾ではチームで学ぶスタイルの導入。2020年に2園目となる認可保育園を設立。そして2022年、小学生向けオンラインキャリア教育「ドリームドリブン」を始動。〝夢があるから頑張れる〟そんな子を日本にも増やしたいと、長年培った教育現場での指導技術を活かし、2年間で100のシゴトが楽しく学べるコンテンツを創りあげる。翌2023年には塾や学童へのtoB事業も開始。
ドリームドリブンのHP
https://www.dream-driven.jp/


【愛娘のパパとしての顔】
7歳の娘みーたんをこよなく愛する自他ともに認める親バカ。 Facebookには、ドリドリの投稿が半分、みーたんへの溺愛ぶりが半分となっている。 最近は「算数が得意になりたい!」みーたんと100マス計算に勤しんでいる。

Q&A

A.
01

お子さまの向き不向きの方が重要です。中学受験か高校受験か、お子さまの性格や特性を考慮して考えましょう。

A.
02

共学人気が続いていますが、男子校だけの良さ、女子校ならではの良さ、は少なからずあります。
が、今後は多様性の時代に伴い、減少傾向にあると思います。

A.
03

私立ほど大学受験対策に偏ってはいませんが、最新の教育法など公立中にはないプログラムが揃っています。学費も抑えられるのも魅力です。

A.
04

経済的に中学受験が可能ならば、まずは塾の説明を家族みんなで聞きに行くのをお勧めします。
どれだけ大変か、しっかり説明を受け、それでも子どもがやる!と強い決意を見せるのであれば学校見学やオープンスクールでその魅力や経費対効果をしっかりと見定めましょう。

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